9月に翔泳社より上梓した『スモール・リーダーシップ チームを育てながらゴールに導く「協調型」リーダー』のポイント整理と、「協調型」リーダーの理解を深めるためにあわせて読みたい本の紹介
『スモール・リーダーシップ』における「協調型」リーダー
『スモール・リーダーシップ』では、リーダーシップのあり方として、「協調型」という言葉を使っています。これについては平鍋さんの推薦の言葉を引用したいと思います。
自分で考え、自分で決め、自分が指示する、というやり方では、現代のプロジェクトは簡単に破綻します。それよりも、一緒に考え、一緒に決め、一緒にコミットするチームを作ること。そして、成功の喜びを分かち合う仲間を作ることのほうが、大きなビジネス成果を生み出すことができるのです。
つまり、リーダーに求められることを一言で言えば、「チームで考えながらゴールを目指す」ことになるのですが、それにあたって考えなければいけないことは大きく二つあります。一つは「チームで成果を出すこと」、そしてもう一つが「チームを成長させること」です。こう書くと簡単なようですが、そのために学ぶべき事柄は多岐にわたります。一方ではプロジェクトマネジメントの手法を知る必要があり、それと同時に、「チームで考え、問題を解決していく」ための広義のコミュニケーション能力が必要になるのです。
そこで、『スモール・リーダーシップ』では、チームとしてのゴールに向かうためのマネジメント手法と、コミュニケーションについて考えなければいけないことの二つを軸として整理しています。
本記事では、特に「コミュニケーション」にフォーカスを当てて、「協調型」リーダーにとって役に立つ本を紹介していきます。
スモール・リーダーシップ チームを育てながらゴールに導く「協調型」リーダー
- 作者: 和智右桂
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2017/09/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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リーダー/マネージャーの仕事を理解する
一冊目は、『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』です。この本は、「リーダーとして、マネージャーとして何をしなければいけないのか」を実にわかりやすく教えてくれます。邦題が若干誤解を招きますが、「マネージャーとして知っておくべきこと」「リーダーとして知っておくべきこと」がそれぞれ個別に提示されています*1。
要約すれば、マネージャーに求められるのは「『人』と向き合うこと、つまり、メンバーの個性を理解してそれを活かすこと」であり、リーダーに求められるのは「進むべき方向を明確に示すこと」です。
一見、普通の組織論に見えますが、どちらかというと「個人として読者がどうするか」という視点で書かれている印象です。事例も豊富で題材も多岐にわたるため、読み物としても楽しめます。
最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと
- 作者: マーカスバッキンガム,Marcus Buckingham,加賀山卓朗
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2006/01/01
- メディア: 単行本
- 購入: 34人 クリック: 421回
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考える力を育てる
「コミュニケーション」というと「伝える」ことに目が行きがちですが、その前提として、いわゆる「論理的思考力」が備わっていなければなりません。さらに、「チームで考える」ことを目指すのであれば、自分が理解しているのは当然としたうえで、そうした「論理的思考力」をどう身につけてもらうかもあわせて考えなければいけないのです。
そこで二冊目は、『世界で800万人が実践! 考える力の育て方――ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる』です。タイトルにもあるように「子どもの考える力の育て方」の体裁をとってはいますが、ここで紹介されていることには子どもも大人も関係ありません。「答えを教えるのではなく、傾聴しながら相手が答えを出すのを支える」という姿勢は、協調型リーダーにとって欠かせないものです。
論理的思考のためのフレームワークとしては、TOCfEが採用されています。この本はTOCfEの教科書として見ても、きわめてわかりやすく解説されています。
世界で800万人が実践! 考える力の育て方――ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる
- 作者: 飛田基
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2017/07/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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共感力を高める
「『仕事』なのだから感情は持ち込むべきではない」という考え方はもちろん正しいのですが、人間そこまで割り切れるようにできてはいません。そして、押し殺された感情は必ず別の形で噴出することになります。したがって、リーダーは「論理」だけでなく、「感情」に寄り添うことが求められるのです。
そんな苦労の絶えないリーダーのための三冊目は、『NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法』です。NVCとは、Nonviolent Communication(非暴力コミュニケーション)の略で、「人を思いやる気持ちを引き出し、人と理解しあう」ためのコミュニケーションの方法論です。方向性としては、『スモールリーダーシップ』でも紹介した『話す技術・聞く技術―交渉で最高の成果を引き出す「3つの会話」』に近い部分もありますが、こちらの方がより深く感情に寄り添っています。
NVCの大きな特徴は、まずは自分の感情を見極めるところから始まる点にあります。感情に触れれば、当然自分の感情も揺れます。「そうした感情に対してどう向き合うのか」から丁寧に解説されています。
- 作者: マーシャル・B・ローゼンバーグ,安納献,小川敏子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2012/06/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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まとめ
知識領域がどんどん幅広く、また深くなっている今、「知識労働においては、仕事の成果は「知的能力」×「コミュニケーション能力」で決まる」とも言われます*2。「知的能力」あるいは専門分野における能力を高めなければいけないのはもちろんですが、チームとして成果を出すためのコミュニケーション能力を高めるうえでフレームワークとなる本のご紹介でした。
*1:付け加えると、「個人として継続的に成功を収めるために知っておくべきこと」を含む三本の柱で構成されています。