記事:エンジニアの成長

エンジニアの成長に関するアンクル・ボブの記事についての要約とコメント。

要約



多面的な年功
http://blog.objectmentor.com/articles/2009/01/20/multi-dimensional-seniority


年功を横軸、技術力を縦軸とした図を用いて、技術者が年功と共にどう技術を身につけていくのかが説明される。横軸には「入門("Novice")− ベテラン("Adept")− シニア("Senior")」、縦軸には「見習い("Apprentice")− 中堅("Journeyman")− 達人("Master")」が設定された上で、例としては、シニアになっても見習いの域を出ないエンジニア(Sam)と、年功と共に達人に近づいていくエンジニア(Jasmin)が示される。ここで、ジャスミンの成長ラインが直線的ではなく階段形式になっている点がポイントとなっている。つまり、ポイントは以下の2点:

  • 中堅期においては様々な経験をしなければならない。そして、この「様々な経験」には転職も含まれるかもしれない。("A journeyman is a journeyman because he/she’s gone on a journey.")
  • 同じ師匠についていたら、師匠−弟子の関係は変わらないので成長することができない。

If you are considering an apprenticeship program it seems to me that the most important aspect of that program is that the relationship is temporary, and results in a journey. In other words, don’t expect to hold on to your apprentices for very long.

徒弟プログラムを考える際に最も重要だと思われるのは、師匠−弟子の関係が一時的なものであり、発展するものだということです。見習いをあなたの下に長時間留めておいてはいけません。

コメント

記事のポイントはきわめて簡潔ですが、正しいか間違っているのかを含めて非常に色々と考えさせられる内容だと思います。もっとも「様々な経験が人を成長させる」というテーゼに関しては普遍的な真実だとは思うのですが。


実は私は「学問には師匠が必要である」と信じています。これは知性とは「散在している情報を統合する力」であり、この統合する視点を提供してくれる(というより盗ませてくれる)のが、師匠という存在だと思うからですね。「守・破・離」という言葉がありますが、少なくてもこのブレイクスルーが訪れるまでは師匠の元につく価値はありますし、優れた師匠であれば、ブレイクスルーを経ても、ダイナミックに師弟関係を再構築していけるような気がします。そういう意味ではコロコロと環境を変えてしまう方が、統合力を身につけることが出来なくなってしまうのではないかと懸念されます。


というように、学ぶ側の立場からこの記事についてあれこれ考えると拡散していってしまうのですが、この記事を書いたアンクル・ボブの意図は、「成長したければ様々な経験をしなさい」ではなく、「見習いを中堅に育てていくためには教える側が考えるべきこと」の方にあるのでしょうね。

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