QConでのリンダ・ライジングの発表:
Perfection Is An Unrealistic Goal
要約
「アジャイル」というテーマに対する非技術的な側面からのアプローチ。
- 睡眠のサイクルが90分単位であることから分かるように、人間の精神のあり方は直線的なものではなく、サイクルを持つもの。
- 90分のサイクルは実は起きている間にも適用されるものであって、効率的に作業するためには、「90分間の集中する期間」と「15〜20分程度の休憩時間」が必要。
- 最新の神経科学の発見によれば、人間の脳は年齢と共に生活のあり方にあわせて発達していく。
- 左脳を鍛えよう
- 休憩しよう
- 遊ぼう
- 何か違ったことをしよう
- 新しい分野の記事や本を読もう
- 目新しい計画で目新しい場所を訪れよう
- こういったことをちょくちょくやろう
- 自分のサイクルを見つけ、少しずつで良いから進歩していこう
- 「初心忘れるべからず」
コメント
ソフトウェア開発の「手法」部分をつきつめていく場合、「エンジニアとしてのあり方」や「作業のやり方」を超えて、「人間としてのあり方」に踏み込んでいく部分があると思います。XPの主張である"Everyone can learn from everyone."をはじめとして、「ふりかえりでネガティブな発言をしない」だとか、「メンバーのモチベーション管理のやり方」などなど例には事欠きません。こういうことが持つ「自己啓発っぽさ」がいまいち好きになれない人もいると思うのですが、「仕事を通じて人間としても成長していこう」という志向は個人的には大切だと思っています。
今回の発表を含めてリンダ・ライジングの話には比較的「そういう」要素があると思うのですが、彼女の場合にはそれなりに科学的に裏づけのある話をしてくれるので、「聴き取りやすい英語」や「プレゼンの巧みさ」も手伝って、妙な「気持ち悪さ」を感じさせない面白いプレゼンになっていると思います。
さて、今回のメインテーマになっていた「90分集中法」には、妙に納得させられました。確かにソフトウェア開発に必要とされる集中力をまる1日持続させるのは難しく、ある程度のサイクルが必要であることは経験からほとんどの人が分かっていることだと思います。それでもある程度の時間、堂々と休憩するのは気が引けることから、タバコを吸ったり、メールチェックをしたりしながら紛らわせているのではないでしょうか。ただ、休憩時間をぼかす事は、意図せずに集中時間をぼかすことにつながってしまっていて、何となく一日をだらっと過ごす結果になるというのは、よくあることのような気がします。
効率的に仕事をする上で「集中力のピークを意識的に作る」ということは非常に重要だと思いますが、そのために「時間を区切る」のは有効でしょう(こうまとめると、すでに「なんとか法」という名前がついていそうな方法ですが)。その上で次の課題は「区切られた時間」の中でいかに自分のピークまでもって行くのかということになりそうですが、それに関しては「特定の身体的な儀式」が有効だという説があるようですよ。